相続・資産承継コラム

高齢者の賃貸住宅探しと大家業の視点から

2025年01月25日 16:58

私は賃貸経営をしている1人の大家として、高齢で単身の方が賃貸住宅を探される際に特に重視しているポイントがあります。それは、身近に生活をサポートする親族や信頼できる方がいらっしゃるかどうかという点です。この視点を重視する理由は、将来的に介護や日常生活の支援が必要になる可能性があるからです。



段階的な健康状態の変化への対応


私自身、父親の介護経験を通じて、介護や生活支援には相当な負担が伴うことを実感しました。人は突然亡くなるよりも、徐々に健康状態や認知機能が低下し、日常生活を単独で行うのが難しくなる場合が多いのではないでしょうか。そのため、段階的な健康状態の変化に対応するために、以下のような支援が求められます。


1. 初期の支援:デイケア施設や訪問介護サービスの利用


地域のケアマネージャーと相談しながら進めることが一般的です。

サービスの契約手続きやデイケア施設への送迎を行う身近な支援者が必要です。


2. 次の段階:施設入居の検討


健康状態や認知機能の低下により、介護施設への入居が必要になることがあります。

この段階では施設の見学や契約手続きを本人に代わって行う役割の方が欠かせません。



大家としての判断基準


高齢者の方の入居を検討する際、サポート体制が整っているかどうかを判断材料としています。具体的には

子供や親族が近隣に住んでいるか

親族が同居している場合、その方がサポートを提供できるか

サポートを提供できる親族が遠方に住んでいる場合の連絡体制はどうか


一方で、以下のようなケースでは入居をお断りせざるを得ないこともあります。

子供が遠方に住んでおり、すぐにサポートできない。

親族はいるものの、ご兄弟などでご自身も高齢である場合。



身近な方の支援の重要性・自身の今後について考える必要性


入居後に段階的な介護が必要になった場合、定期的なサポートや契約手続きの代行ができる人がいることは、安心して暮らせる環境を整えるうえで非常に重要です。また、大家としても、入居者の生活を支えられる環境が整っていることは安心感につながります。


自身の今後の介護や認知症対策について考えることは、誰にとっても避けて通れない重要なテーマです。しかし、その課題と正面から向き合って考えている方は、実際にはまだ多くないのが現状ではないでしょうか。


賃貸住宅を探されている高齢者の方々も、何かしらの理由があって新しい住まいを必要とされています。そのタイミングは、自身の将来についてじっくりと向き合う良い機会でもあると感じます。そのため、私自身、1人の大家として、高齢の方からの入居希望があった際には、必ず今後のサポート体制についてお話を伺うようにしています。


例えば、「近くに親族の方が住んでいらっしゃるのか」「緊急時や介護が必要になった場合にどのようなサポートが受けられるのか」といった具体的な点について確認します。これは、入居後に安心して生活を送っていただくための重要なプロセスです。何よりそういった事を話し合うことは、ご本人にとっても非常に重要なことになるからです。


高齢者の住宅探しは、単なる住まいの確保にとどまらず、将来の安心や安全を考える良いタイミングです。本人の健康状態や経済状況、サポート体制を十分に考慮し、信頼できる大家や不動産業者、地域の支援を活用しながら最適な選択を進めていくことが大切なのではないでしょうか。

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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太