相続・資産承継コラム

遺言だけではできない?段階的な資産承継を実現する受益者連続型信託

2024年12月19日 19:19

受益者連続型信託とは?柔軟な資産承継を実現する方法


遺言で「資産を妻に、その後は長男へ」といった後継ぎ遺贈を指定したいと考える方も多いかもしれません。しかし、民法上、このような連続した継承先を指定する遺言は無効とされます。このため、従来の方法では、希望通りの資産承継を実現するのが難しいのが現状です。


そこで登場するのが受益者連続型信託です。この仕組みを活用することで、所有権を「信託受益権」という形に置き換え、資産の継承先を段階的に設定することが可能になります。たとえば、「まずは妻が資産を受け取り、妻が亡くなった後に長男へ引き継ぐ」といった、複数段階にわたる継承をスムーズに行うことができます。


受益者連続型信託の仕組み


1. 信託設定時

委託者(資産を持つ人)と受託者(資産を管理する人)が信託契約を設定し、信託財産(資産)の管理を受託者に託します。

2. 第一受益者の指定

資産の収益を受け取る最初の受益者を指定します。たとえば「自分自身」を第一受益者とします。

3. 第二受益者以降の指定

第一受益者が亡くなった後の信託受益権を、次の受益者(たとえば「妻」)に移転するよう指定します。

そして第二受益者が亡くなった後は第三受益者(たとえば「長男」)に移転するよう指定する。

4. 残余財産の権利帰属者の指定

最終的に信託終了時に残った財産があれば、その受取人(残余財産の帰属先)を指定しておく事(たとえば「孫」など)で、点ではなく線での資産承継先を指定する事ができる。



受益者連続型信託のメリット


資産承継の柔軟性

遺言では実現できない連続的な資産承継が可能。

配偶者の生活保障

配偶者の生存中は安心して資産を利用できる。

資産の一体管理

信託財産として一括管理されるため、資産の分散や管理負担が軽減。

争族回避

あらかじめ承継先が明確に決まっているため、親族間の対立を防ぎやすい。



注意点


1. 期間の制限

法律上、受益者連続型信託には最長30年という制限があります。これを超える設定はできません。

2. 専門性の必要性

信託契約の設計には高い専門性が求められるため、信託や相続に詳しい専門家に相談することが重要です。

3. 費用

信託設定時や運用中にかかる費用が発生する場合があります。不動産を信託する際には登録免許税や信託登記の費用、公正証書による書類作成費用など、信託契約の設定には一般的に50〜100万円程度の費用が発生するケースが多いです。



まとめ


受益者連続型信託は、遺言だけでは実現できない「資産を誰にどう引き継ぐか」を柔軟に設定できる強力なツールです。特に、配偶者の生活を守りつつ、次世代へのスムーズな資産承継を実現するには非常に有効な手段と言えます。


ただし、設計や運用には専門的な知識が必要なため、信託や相続に詳しい専門家に相談することで、自分の希望に沿った最適なプランを作り上げることができます。家族が安心して資産を引き継げる仕組みを、この信託を活用して検討してみてはいかがでしょうか。

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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太