相続・資産承継コラム

不動産売買の裏側!不動産業者が担う重要な役割とは?

2024年12月02日 17:22

不動産売買の際に不動産業者が行う物件調査


不動産屋と聞くと、物件の案内をしてくれるだけと思われがちです。


しかし、実際には不動産業者の本当の仕事はその裏側にあります。物件の価値を正しく評価し、法的なリスクを徹底的に調査し、売主と買主の間で公平な条件を整えることが、重要な役割です。


不動産取引は人生で最も高額な取引の一つ。そのため、取引後に「知らなかった」「確認していなかった」ことが原因でトラブルになるケースは決して珍しくありません。こうした問題を防ぎ、安全で安心な取引を実現するために重要なのが、「徹底した物件調査」です。


内覧や案内はあくまで氷山の一角。見えない部分で行われる綿密な準備や調整が、不動産取引の安全性と成功を支えているのです。不動産の売買では、不動産業者(不動産屋)が売主・買主の間に立ち、円滑かつ安全に取引が進むよう多くの役割を担っています。以下に、不動産業者が行う物件調査の主な業務を解説します。


1. 物件の調査


①物件調査で確認する内容


(1)登記内容の確認


所有権の確認:売主が正当な所有者であるか。

抵当権や担保の有無:物件に抵当権、仮登記、差押えなどが設定されていないか。

地役権・賃借権の確認:他人が利用する権利が設定されていないか。

共有名義の場合の権利確認:共有者全員の同意が必要。


(2)法令制限の確認


用途地域:都市計画法に基づき、物件がどの用途地域に属するか(住宅地、商業地など)。

建築基準法:建ぺい率や容積率、既存不適格建築物でないか。

その他の法規制

• 景観法、土地区画整理法、農地法などの適用があるか。

• 防火地域や準防火地域の指定があるか。

• 市役所や管轄土木事務所での用途地域や法規制を確認。

• 必要に応じて、専門家(土地家屋調査士、司法書士など)と連携。


(3)境界の確認


隣地との境界線:地積測量図や土地家屋調査士による測量を利用し、土地の境界を明確にする。

越境の有無:隣接地との間で建物や塀などが越境していないか。


(4)接道義務の確認


接道条件:建築基準法に基づき、4m以上の道路に2m以上接しているか(再建築の可否に影響)。

私道負担:私道の所有者や利用権の状況、修繕費負担の有無。


(5)借地権・定期借地権の確認


• 借地権付きの場合、借地権の契約内容や更新の条件を確認。

• 売買対象が建物のみの場合、土地利用権の有無をチェック。


2.物件調査が重要な理由


① トラブルの未然防止


権利の問題

• 売買後に、売主が正当な所有者でないことや、所有権を阻害する要因が残っていることが判明すると、買主は物件を利用できなくなるリスクがあります。

境界問題

• 隣地とのトラブル(越境や境界線の不明確さ)は、売買後に長期間にわたり問題となる可能性があります。

法令違反

• 建築基準法に違反した建物は、再建築や増改築が制限されるため、購入後に想定外の費用が発生することがあります。


② 買主・売主双方の安心を確保


• 不動産は一生に一度の大きな取引であることが多く、法的リスクを排除することで双方が安心して取引を進められます。


③ 取引の円滑化


• トラブルを未然に防ぐことで、取引が滞ることなくスムーズに進行します。

• 例:境界問題を事前に解決しておくことで、買主が安心して購入を決断できる。


3. 物件調査を怠った場合のリスク


所有権移転や再建築に許認可が必要な場合

• 特に再建築に関する制限では、数十年経過したのちに建て替えを検討するタイミングで問題が表面化するケースがある。

境界が不明確な場合

• 隣地所有者とトラブルになり、費用や時間を要する境界確定訴訟が必要になる。

法令違反の場合

• 増改築や利用が制限され、購入目的を果たせない。

借地権や地役権が曖昧なまま残っている場合

• 買主が物件を手に入れた後も、その財産が他人の権利によって制約を受ける。


4.しっかり調査を行ってくれる不動産業者を見極めるコツ


①物件に関するリスク情報を隠さない


• 業者が不動産のデメリットやリスク(例:境界トラブルの可能性、接道義務の問題など)を隠さず、正直に伝えてくれるかどうかをチェック。

信頼できる業者:問題がある場合、その解決策まで提案してくれる。


②質問に対して具体的で明確な回答があるか


• あなたが気になる点(法令制限、登記内容、境界問題など)を質問した際に、専門的かつ具体的に答えられる業者を選びましょう。

• 曖昧な回答や「後で調べます」と言ったきり連絡がない業者は、調査能力が低い可能性があります。

信頼できる業者は、説明が一方的でなく、わかりにくい部分を質問しやすい雰囲気を作り、図面や資料を使って丁寧に解説します。


③他の専門家とのネットワークがある


• 信頼できる不動産業者は、土地家屋調査士や司法書士、不動産鑑定士、弁護士などと連携して調査を進めます。

• 「調査内容に応じて専門家に依頼する」といった説明がある場合は、信頼性が高いです。

• 「この調査は司法書士に依頼します」「境界の測量は土地家屋調査士にお願いする必要があります」といった説明を透明性を持って行う業者は、誠実な対応をしている証拠です。


④「安すぎる仲介手数料」に惑わされない


• 仲介手数料を極端に値引きする業者は、調査や手続きが不十分なケースがあるため注意が必要です。

• 安価な手数料の裏には「必要な調査を省略している」可能性があります。

• 適正な報酬を受け取る業者は、それに見合った品質のサービスや知識を持っているか確認しましょう。



ーーまとめーー

不動産売買は人生で最も大きな取引の一つです。安心して取引を進めるためには、信頼できる不動産業者を選び、物件の徹底的な調査を行うことが不可欠です。


信頼できる業者は、単に物件を紹介するだけでなく、法的調査やリスク分析、売買契約の調整など、取引全体を安全に導くプロフェッショナルな役割を果たします。また、物件調査を通じて、境界や法令制限、権利関係、建物の状態などを事前に確認することで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。


業者選びの際は、調査内容の説明が丁寧で具体的か、リスクを隠さず正直に伝えるか、対応が迅速かつ誠実かを見極めることがポイントです。また、専門家との連携や過去の実績、口コミなども参考になります。


物件調査が不十分だったり、不誠実な業者を選んでしまうと、取引後に想定外の問題が発生するリスクが高まります。一方で、信頼できる業者と徹底的な調査によって、購入・売却の全プロセスを安心して進めることができるでしょう。

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相続。不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太