高齢の親の財産を守る!家族間トラブルを防ぐ成年後見制度の活用法
2024年11月28日 18:06
「家族の絆が壊れる前に…高齢の親の財産を守るためにできること」
高齢の親が認知症を患い、判断力が低下したとき、その財産管理は家族にとって大きな課題となります。特に、同居する家族が親の財産を管理している場合、不透明な支出や使い込みが原因で兄弟間の信頼が揺らぐことも珍しくありません。
「親のお金なのに、どうしてこんなに減っているの?」
そんな疑問が家族を分裂させる前に、親の財産を守るための具体的な対策を知ることが大切です。本記事では、成年後見制度や財産管理の工夫を通じて、親の権利と家族の絆を守る方法をわかりやすく解説します。
成年後見制度で財産を守った物語:同居の息子による使い込みを防ぐために
1. はじまり:母の預金5000万円と同居の長男・一郎
高齢の母、美代子さん(82歳)は、数年前から認知症を患い、日常生活のサポートが必要になっていました。母の財産は預金5,000万円が主で、長男の一郎が美代子さんと同居しながら生活全般の世話をしていました。
一見すると母と一郎の生活は問題ないように見えましたが、次男の二郎と長女の春子は、美代子さんの預金が不自然に減少していることに気づきました。
「母さんのお金、どうしてこんなに減ってるの?」
二郎が問い詰めると、一郎は「介護に必要なお金や生活費だ」と言い訳をしました。しかし、二郎と春子は納得できませ。美代子さんは介護サービスを受けておらず、大きな出費の理由も説明されなかったからです。
2. 財産の危機と兄弟間の対立
春子は銀行の明細を確認し、「母の預金が数百万単位で引き出されている」と気づきました。さらに調べると、そのお金が母のためではなく、一郎の趣味や個人的な買い物に使われていることが判明。
「これじゃ母さんのお金がなくなっちゃう!母さんの財産を守るために何とかしなきゃ」と春子が焦る一方、一郎は「俺が一緒に住んで世話してるんだから、このくらい当然だろ!」と反発。家族内で激しい言い争いが始まりました。
二郎と春子は、母がこれ以上不利な状況に陥らないよう、法的な手段を取ることを決断しました。
3. 成年後見制度の申立て
二郎と春子は弁護士に相談し、成年後見制度を利用することを決めました。専門家は次のようにアドバイスしました。
• 成年後見制度の利用目的:
・母親の預金を守り、不正な引き出しや使い込みを防ぐ。
・母が不利益を被らないよう、適切な財産管理を行う。
• 申立て手続き:
1. 家庭裁判所に成年後見の申立てを行う。
2. 母親の診断書や財産目録を提出し、後見人を選任してもらう。
二郎と春子は家庭裁判所に申立てを行い、母の状況や一郎による使い込みの疑いについて詳細に報告しました。
4. 後見人の選任と財産の保護
家庭裁判所は、母の財産を公平に管理するため、親族ではなく専門家である司法書士を成年後見人として選任しました。後見人は次のような行動を取りました:
1. 預金口座の管理:
• 美代子さんの預金5,000万円を後見人が管理することで、一郎による不正な引き出しを防止。
2. 使い込まれたお金の確認:
• 過去の取引明細を調査し、一郎が不正に引き出した金額を特定(約800万円)。
3. 一郎に返還請求:
• 使い込み分を一郎に返還させるため、家庭裁判所を通じて法的な手続きを開始。
4. 母の生活費の適正管理:
• 美代子さんの日常生活費や医療費は、後見人が必要な分だけ引き出して管理。
教訓:成年後見制度の力
• 公平な財産管理:
後見人の管理によって、家族間の対立や不正な使い込みを防げる。
• 生活の安定:
財産が守られ、適切に活用されることで、本人の生活が安定する。
成年後見人が選任されると、被後見人(以下「本人」)の財産管理において、本人やその家族・親族が財産を自由に動かすことはできなくなります。つまり、預貯金の引き出しや振り込み、不動産の処分、有価証券の管理など、すべての財産に関する行為が成年後見人の管理下に置かれ、後見人の同意がなければ実行できなくなるということです。
成年後見制度では、本人や家族が自由に財産を管理することが制限される一方で、「財産を守る」目的で活用することができます。
トラブルになる前に!5つの対策案
①家族会議の開催
・財産の使い道や管理方法について、家族全員で話し合い、合意を形成します。
・「生活費」「医療費」「特別な支出」などを明確に区分し、具体的な使い方を文書化します。
②財産管理の透明化
・預金通帳や取引明細を定期的に家族全員で確認する仕組みを作ります。
・一人が独断で引き出せないよう、通帳と印鑑を別々で管理する等を検討します。
③任意後見契約の活用
・判断能力を失う前に、信頼できる家族や専門家と任意後見契約を結び、財産管理の権限を明確にしておきます。
④信託制度の活用
・信託制度は、自分の財産を信頼できる第三者(信託会社や親族など)に管理・運用してもらい、本人や指定された受益者の利益のために活用する仕組みです。高齢者や判断能力が低下した方の財産を守る手段として、成年後見制度と並び活用されることが増えています。
⑤専門家への相談
・専門家による中立的な視点で財産の現状を把握します。
・必要に応じて財産目録を作成し、管理状況を可視化します。
ーーまとめーー
財産管理や相続に関する手続きで最も重要なのは、「本人の利益と意思を最大限尊重する」という基本的な姿勢です。特に、高齢者や判断能力が低下している方の場合、その意思を汲み取りつつ、財産が適切に管理・活用されるようにすることが不可欠です。
そして、それを実現する過程で、家族間の信頼を守り、トラブルを防ぎながら、公平で適切な財産管理や分割を進めることです。この基本姿勢が財産管理や相続が「争いの原因」ではなく、「家族の絆を深める要素」に変わります。
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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太