トラブル回避!遺産分割での不動産評価、どの基準を使うべき?
2024年11月27日 19:16
「遺産分割の話し合いがまとまらない…」そんな事態になる前に知っておきたい対策例
「この不動産の評価額は高すぎる」「現金が少なくて不公平だ」――遺産分割の話し合いでは、不動産の評価や分割方法を巡って相続人同士の意見が対立することが珍しくありません。特に、不動産は現金のように簡単に分けられないため、感情的な衝突が起きやすい資産です。
こんな時、どうすれば全員が納得できる遺産分割を実現できるのでしょうか?
本記事では、専門家が勧める「公平な分割方法」や「トラブルを防ぐための実践的な対策」をご紹介します。家族間の争いを避け、スムーズに遺産分割を進めるためのヒントをぜひご覧ください!
1. 意見対立が起きやすい理由
• 不動産の評価額が複数ある
固定資産税評価額、路線価、実勢価格など、複数の評価方法があり、それぞれで評価額が異なるため。
• 分割方法の希望が異なる
「売却して現金化したい」「不動産をそのまま引き継ぎたい」など、相続人ごとの希望が一致しない。
• 感情的要因
家族間の感情的な対立や、特定の相続人に不満がある場合に意見がまとまりにくくなる。
• 不動産の情報が共有されていない
特定の相続人が不動産に関する情報を多く持っている場合、他の相続人に不信感が生じる原因になります。
2. ケース別の対策例
ケース①:売却の予定がなく、他の相続人が分け方が不公平だと反対する場合
売却予定がない場合は路線価や相続税評価額といった公的な評価基準を採用する方がオススメです。その理由を詳しく解説します。
1. 市場価格は確定的ではない
• 実勢価格(市場価格)は変動する
市場価格は経済状況や地域の需要と供給の影響を受けやすく、時期によって変動します。売却を予定していない場合、この変動が実際の遺産分割に不必要な混乱を招くことがあります。
• 査定価格はあくまで目安
不動産会社の査定価格は、周辺相場や市場の状況を基にした推定値であり、取引が成立する保証はありません。売却予定がない場合、こうした目安に基づいて評価額を決めると、相続人間で不公平感が生じる可能性があります。
2. 公的評価は相続税との整合性が取れる
• 相続税申告と一致させやすい
路線価や相続税評価額を基準にすれば、相続税の計算と遺産分割の評価基準を統一できます。これにより、相続人間で余計な混乱を防ぎ、スムーズな分割を進めることができます。
• 過少申告リスクの回避
実勢価格で評価すると、相続税評価との差異が問題視される可能性があります。公的評価を基準にすれば、税務署からの指摘を受けにくくなります。
3. 話し合いを円滑に進めるためのポイント
①感情的な対立を避ける
• 市場価格や査定価格は推定値であり、主観的な要素が入りやすいため、それを基に話し合いをすると相続人間で意見が対立しやすいです。一方、公的評価は第三者機関が定めた基準なので、感情的な衝突を避ける助けになります。
②公平性を重視
路線価や相続税評価額は国税庁や自治体が定めた基準に基づいており、客観性と公平性があります。特に、相続税申告にも利用されるため、税務的な問題もクリアしやすいです。
③代償金の提案
• 他の相続人に代償金を支払う、不動産の評価額に基づいて調整。
④専門家を交えた協議
• 税理士、不動産コンサルタント、弁護士など中立の立場の専門家を交え、冷静に協議を進める。
ケース②:売却を希望する相続人と、引き継ぎたい相続人がいる場合
1. 引き継ぎたい相続人が不動産を取得する場合
• 売却を希望している相続人は市場価格(査定価格)を参考にするケースが多いですが、前述の通り査定価格はあくまで目安です。
しかし、実際に売りに出すわけにはいきませんので、業者の買取査定額を採用する事をオススメします。
• 理由:
• 実勢価格(市場価格)は変動しやすく、実際に売却してみないと確定できません。
• 買取査定額は不動産会社が実際に買い取る際の金額で、取引可能な価格に近い基準となります。
• 売却を希望している相続人の理解を得やすい。
• 具体的な方法:
• 不動産会社に複数の買取査定を依頼し、その平均値を基準として採用します。
• 査定額の明細を相続人全員に共有して透明性を確保します。
2. 代償金の支払いによる調整
• 不動産を引き継ぎたい相続人が不動産を取得し、売却を希望する相続人に代償金を支払う形で公平性を保ちます。
① 代償金の計算
• 買取査定額を基準とし、不動産の評価額に基づいて相続人それぞれの取り分を算出します。
• 例:不動産の買取査定額:3,000万円
• 相続人2人で分割の場合、取得者が1,500万円を代償金として支払う。
② 代償金の支払い方法
• 一括払い:取得者が現金で代償金を支払う。
• 分割払い:相続人間で合意を得て、分割で支払う。
• ローンの活用:不動産を担保にローンを組み、代償金を支払う。
3. 引き継ぎたい相続人の負担軽減策
① 分割払いの合意
• 取得者が資金に余裕がない場合、売却を希望する相続人と分割払いで合意します。
• 分割のスケジュールを明確にし、合意内容を文書化(専門家を交えた書類の作成を推奨)。
② 一部売却で資金調達
• 不動産を分筆し、売却可能な部分を売却して代償金を用意。
• 例:広い土地の一部を売却し、残りを取得者が保持。
③ 共有からの買い取り
• 一時的に不動産を共有し、引き継ぎたい相続人が後に他の相続人から持ち分を買い取る形で調整。
4.話し合いをスムーズに進めるためのポイント
• 評価方法とその根拠を相続人全員に明確に説明し、不信感を防ぎます。
• 「この評価方法を使う理由」を納得してもらうことが重要です。
• 感情的な対立が起こる背景(不公平感、思い入れなど)を理解する。
• 話し合いが難航する場合、必要に応じて中立的な第三者(弁護士や調停人)を交えて進行する。
ーーまとめーー
相続における不動産分割でトラブルを防ぐためには、以下のポイントが重要です。
1. 納得できる評価基準を採用:査定額や公的評価を基に全員が納得できる評価を提示する。
2. 分割方法を決める:代償分割や換価分割など、現状に合った方法を選択。
3. 合意内容を文書化:協議書や公正証書を作成し、後のトラブルを防止。
4. 専門家の活用:中立的なアドバイスを得て、冷静かつ公平に解決する。
5. 感情的な要素への配慮:背景や思い入れを尊重し、丁寧に進める。
適切な対応を取ることで、相続人全員が納得できる円満な解決を目指しましょう。
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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太