土地の境界線:トラブルを未然に防ぐための基礎知識と解決法
2024年11月25日 18:17
「この土地の境界って、本当にここで合ってるの?」
不動産を所有している方や、相続された方であれば、一度はこんな疑問を抱いたことがあるかもしれません。実は、この“境界線”を巡るトラブルは、思った以上に多いのです。越境された建物やフェンス、曖昧な境界線が原因で隣人との関係が悪化したり、売却や相続がスムーズに進まなくなるケースもあります。
こうしたトラブルは、境界線について正しい知識を持つことで未然に防ぐことが可能です。この記事では、境界に関する基本的なポイントから、トラブルの防ぎ方、そして解決策までを分かりやすく解説します。不安を解消し、大切な土地を安心して活用するための第一歩を踏み出しましょう!
1:土地の境界線には2種類ある!
①. 筆界(ひっかい)
・筆界は動かすことができない「公的な境界線」であり、法務局に登録されている図面に基づきます。
例:下が公図(こうず)と呼ばれる法務局に登録されている土地の地図になります。この地図に記載されている境界線が筆界になります。
②. 所有権界(しょゆうけんかい)
・実際に利用されている土地の境界線。塀やフェンスなどで物理的に区切られている場合が多いですが、必ずしも筆界と一致するとは限りません。
例:ブロック塀などで実際に区切られている境界線。
所有権界と筆界は基本的に一致しているものの、土地利用の実態や測量の誤差などによってズレが生じる場合もあります。
2つの境界線が揃っているかどうかを確認するには?
① :境界標(杭や石)の有無を確認
• 境界を示す杭や石が現地に設置されているか確認します。
• 設置されている場合でも、隣地所有者との認識が一致しているか確認が必要です。
境界標の例
②:公的資料を確認する
• 法務局で「公図」を取得し、土地の形状や境界線を確認します。
• 公図よりも精度が高い「地積測量図」がある場合、これを取得して現地の境界と照合します。
• 測量図がない場合や、古い図面しかない場合は新たに測量を行う必要があるかもしれません。
③:専門家のサポートを受ける
• 土地家屋調査士へ「確定測量」の依頼をする。
• 費用はかかりますが、専門家へお任せすることで境界確定時に必要な隣地所有者との立会いや交渉を円滑に進める支援を受けられます。
2. 境界トラブルが発生する主な原因は、この2つの境界線がズレている事にあります。
境界トラブルが起こる背景には、以下のような原因が挙げられます
• 測量の精度や時代背景によるズレ(過去の測量技術は現代ほど精密ではなく、実際の土地の形状や面積と一致しないケースがあります。)
• 隣地の建物や塀、フェンスが筆界を越えて設置されていることで生じる場合があります。
• 境界標(杭や石)が動かされたり、失われたりした結果、実際の利用状況が一致しなくなる場合があります。
• 長期間にわたる越境や暗黙の了解で、もともとの隣地との境界がズレたまま認識される場合があります。これが登記上の筆界と異なることがあります。
• 河川の氾濫や地震、地滑りなどにより、土地の形状や位置が変化することで筆界と所有権界がズレることがあります。
ズレはどうやって解決するのか?
1:基本的には、筆界か所有権界かのどちらかの境界線に合わせる事になります。
①. 筆界に合わせる場合
・隣地所有者と話し合い、筆界に基づいてフェンスや塀を移動させるなどの調整を行います。
・隣地に越境している物(建物、塀、庭木など)がある場合、それを撤去や解体をします。
・現状はそのまま使用して、建て替えなどのタイミングで将来的に境界線を合わせる。
②. 所有権界に合わせる場合
・ズレがある部分を分筆する。(土地を、境界が一致している範囲とズレている範囲で分ける)
・分けられた土地(ズレ部分)の所有権を移転する。
・分筆費用と所有権移転の費用がかかる。
※費用負担の観点から①の筆界に合わせるケースが多いですが、どちらが正しいということはなく、状況によって判断します。
2:隣地との話し合いがまとまらず、境界がはっきりしない場合
①. 筆界特定制度を利用する
・筆界特定制度とは,土地の所有者として登記されている人などの申請に基づいて,筆界特定登記官(法務局所属)が,外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて,現地における土地の筆界の位置を特定する制度です。
・筆界特定の結果に納得することができないときは,後から裁判で争うことも出来ます。
②. 境界確定訴訟
・境界確定訴訟は、隣地所有者との間で土地の境界について争いが生じた際、裁判所がその境界を法的に確定するための手続きです。
・解決までに長期間を要し、費用負担も大きいです。(勝訴・敗訴の概念がないため、訴訟費用を負担する事になります)
ーーまとめーー
土地の境界線を明確にすることは、不動産の資産価値を守るだけでなく、隣人関係や法的トラブルを防ぐ上でも非常に重要です。早期に確認・対処し、問題を未然に防ぐことで、不安のない不動産取引や相続を実現しましょう。
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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太