相続・資産承継コラム

相続した土地を国に返せる?相続土地国庫帰属制度について

2024年11月23日 18:31

「相続した土地をどうすべきか?」多くの人が抱える課題の一つです。使う予定がない土地や、維持管理が困難な土地を相続した場合、そのまま所有し続けると固定資産税や維持費が負担となります。


そんな悩みを解消する手段として、2023年4月に施行された「相続土地国庫帰属制度」が注目されています。この制度を活用すれば、一定の条件を満たした土地を国に返却し、管理の負担から解放されることが可能です。


ただし、すべての土地が対象になるわけではありません。また、国が土地を受け入れる際には「負担金」の支払いが必要で、これは土地の今後の管理費用に充てられます。本記事では、相続土地国庫帰属制度のポイントと概要について記載しています。


相続土地国庫帰属制度とは


相続土地国庫帰属制度は、2023年4月から施行された新しい制度で、相続した土地を不要と感じた場合に、その土地の所有権を国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことを可能にする仕組みです。この制度は、相続による土地所有者の負担軽減を目的としており、放置された土地や管理困難な土地を適切に処理する一助となります。


国庫帰属制度を利用する際のポイント


1. 条件を確認

• 土地の状態をよく確認し、条件を満たすか事前に調査。

• 必要に応じて土地整備(廃棄物撤去など)を行う。


2. 専門家に相談

• 手続きや条件に不安がある場合、司法書士や土地家屋調査士に相談。

• 必要書類や申請内容の確認を依頼。


3. 負担金の準備

• 負担金額は土地の状態に応じて異なるため、事前に見積もりを確認。


以下、制度の主な概要です。



1. 対象者


• 土地を相続または遺贈によって取得した者。

• 共有土地の持分の一部を相続によって取得した共有者がいる場合。共有者の全員が共同して申請を行うことによって、本制度を利用することができます。

• 他の共有者が、売買や贈与など相続以外の原因で持分を取得している場合でも適用されます。


具体例

• Aさんが亡くなり、子どもであるBさんとCさんが土地を相続(それぞれの共有持分を取得)。

• その他の所有者に、売買で共有持分を取得したDさんがいる場合

• この土地を国庫帰属させるには、Bさん、Cさん、Dさんの全員が共同で申請を行う必要があります。


※相続等以外の原因(売買など)により自ら土地を取得した方や、相続等により土地を取得することができない法人は、基本的に本制度を利用することはできません。



2. 引き取ることができない土地(申請の段階で却下となる要件)


①建物が立っている土地


②抵当権などの権利が設定されている土地


③他人の利用が予定されている土地

具体例

(1) 現に道路として利用されている土地

(2) 墓地内の土地

(3) 境内地

(4) 現在、水道用地、用悪水路、ため池として利用されている土地


④土壌汚染されている土地


境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

(1) 申請者が認識している隣接土地との境界が表示されていること

※ 既設境界標、地物、地形又は工作物等の存在により境界点を表示することができる場合は、それらを申請者が提出する図面に表示します。それらが存在しない場合は、申請者が認識する境界を表示するため、申請者が境界点を表示する目印を設置し、申請者が提出する図面に表示し、申請者が認識している隣接土地との境界を表示する必要があります。

(2) 申請者が認識している申請土地の境界について、隣地所有者が認識している境界と相違がなく、争いがないこと

※ 承認申請後、法務局から隣接する土地の所有者の方へ、境界争いの有無等について確認の連絡をします。



3. 審査の結果引き取ることができない土地(審査の段階で不承認となる要件)


①一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地

政令で定める崖の基準(勾配30度以上+高さ5メートル以上)に該当する崖がある土地であって、通常の管理に当たり過分な費用又は労力(※)を要する場合には、帰属の承認をすることができません。


②土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地

(1)工作物、車両又は樹木その他の有体物が存する

(2)その有体物(※)が土地の通常の管理又は処分を阻害する


※森林において樹木がある場合や、宅地において安全性に問題のない土留めや柵等がある場合など、その土地の形状・性質によっては、地上に有体物が存したとしても、必ずしも通常の管理又は処分を阻害するわけではありません。


③土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地

<想定される有体物の具体例>
・産業廃棄物
・屋根瓦などの建築資材(いわゆるガラ)
・地下にある既存建物の基礎部分やコンクリート片
・古い水道管
・浄化槽
・井戸
・大きな石 など


④隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

<想定される具体例>
・申請地に不法占拠者がいる場合
・隣地から生活排水等が定期的に流入し続けており土地の使用に支障が生じている場合 
・別荘地管理組合から国庫帰属後に管理費用を請求されるなどのトラブルが発生する可能性が高い場合
・立木を第三者に販売する契約を締結している場合
 など


⑤その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

<想定される具体例>
・土砂の崩壊の危険のある土地について崩壊を防ぐために保護工事を行う必要がある場合
・大きな陥没がある土地について人の落下を防ぐためにこれを埋め立てる必要がある場合
・大量の水が漏出している土地について排水ポンプを設置して水を排出する必要がある場合 など



4. 負担金



5. 手続きの流れ

上記概要は法務省資料から引用


ーーまとめーー

相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を相続した場合の選択肢として非常に有効です。ただし、すべての土地が条件を満たすわけではなく、審査や手続きが必要となります。土地管理の負担を減らすためにも、早めに土地の状態を確認し、専門家と連携しながら適切な対応を進めましょう。

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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太