相続・資産承継コラム

不動産を売却した時の税金は?

2024年11月18日 16:09

相続した不動産を売却する際、「どれくらいの税金がかかるのか?」と心配される方は多いです。


不動産を売却した場合には、譲渡所得税が発生する可能性があります。この税金は、売却価格と取得費との差額である「譲渡所得」に基づいて計算されます。以下に詳しく解説します。

1. 譲渡所得税の概要


対象:不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合に課税される。


課税される所得:売却価格 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額(適用がある場合)。


利益に対して課される税率

• 所有期間(被相続人の所有期間を引き継ぎます)が5年以下:短期譲渡所得(39.63%)

• 所有期間(被相続人の所有期間を引き継ぎます)が5年超:長期譲渡所得(20.315%)


※被相続人(亡くなった方)の所有期間を引き継ぎますので、多くの方は長期譲渡所得に該当します。



2. 取得費の基本ルール


相続で不動産を取得した場合、売却時の取得費は以下のいずれかとなります:


被相続人の取得費を引き継ぐ

被相続人が不動産を購入した際の価格(購入代金や登記費用など)や、購入後に行ったリフォーム費用などが含まれます。


譲渡価格の5%を取得費とみなす特例

被相続人の取得費が分からない場合や、記録が残っていない場合、譲渡価格の5%を取得費として計算することが認められています。


①被相続人の取得費を引き継ぐ場合

被相続人が不動産を購入した際の資料(売買契約書や領収書)がある場合、取得費を引き継いで計算します。

取得費や譲渡費用に含まれるもの

• 不動産の購入代金。

• 購入時にかかった仲介手数料や登記費用。

• 建物の取得後に行ったリフォーム費用。

• 土地の造成費や整地費用。

※購入や建築から時間が経過して、当時の売買契約書や建物の請負契約書等が残っていない場合は、下記の譲渡価格の5%が適用されます。


②取得費が不明な場合:5%特例

被相続人の取得費が確認できない場合や、記録が残っていない場合には、5%特例が適用されます。

計算方法

取得費 = 譲渡価格 × 5%

残りの95%が譲渡所得の計算に含まれるため、税額が高くなる可能性があります。


具体例

ケース1:被相続人の取得費が分かる場合

売却価格:4,000万円

被相続人の取得費:2,000万円

譲渡費用:200万円

譲渡所得の計算

4,000万円 - (2,000万円 + 200万円) = 1,800万円

1,800万円×20.315%(長期譲渡所得)=税額3,656,700円


ケース2:取得費が不明で5%特例を適用

売却価格:4,000万円

取得費:4,000万円 × 5% = 200万円

譲渡費用:200万円

譲渡所得の計算

4,000万円 - (200万円 + 200万円) = 3,600万円

3,600万円×20.315%(長期譲渡所得)=税額7,313,400円


上記の取得費が分かっているケースと取得費が不明なケースでは税額に3,656,700円の差が出来てしまいました。


※取得費の計算の注意点


(1) 税額が増えるリスク

取得費が不明な場合、5%特例では低い取得費が適用されるため、譲渡所得が高額になり、課税額が増えるリスクがあります。


(2) 資料の保管の重要性

被相続人が不動産を購入した際の資料が残っていれば、正確な取得費を計算でき、税額を抑えることができます。取得費に関する資料は相続時に確認しておくことが大切です。


(3) 建物の減価償却

建物の場合、被相続人の取得費を引き継ぐ際に、取得費から減価償却分を差し引く必要があります。これは建物の築年数に応じて老朽化が進むためです。