なぜ査定額がバラバラ?不動産査定価格のばらつきの理由を徹底解説
2024年11月16日 15:37
不動産を売却する際、複数の不動産会社に査定を依頼すると、驚くほど価格に差が出ることがあります。
同じ物件にもかかわらず、なぜこれほどまでに査定額がバラバラになるのでしょうか?その理由は、査定の方法、会社ごとの評価基準、そして査定の目的や視点の違いにあります。
この記事では、不動産査定価格にばらつきが生じる主な原因を詳しく解説し、その背景や正しい価格を見極めるためのポイントをお伝えします。不動産売却で後悔しないために、査定額の差が生じる理由を理解し、適正価格を知るためのヒントになれば幸いです。
まず不動産の評価方法には主に3つの種類があり、それぞれ異なる視点で価格を算出します。以下に、それぞれの評価方法とその特徴を解説します。
1. 取引事例比較法
概要:
近隣の類似物件の取引事例を参考にして、査定対象となる不動産の価格を算出する方法です。不動産市場でよく使われる一般的な方法です。
• メリット:
• 現実の取引価格を基にするため、市場価格に近い査定が可能。
• 周辺環境や類似物件の特徴を反映しやすい。
• デメリット:
• 類似物件が少ない場合、正確な査定が難しい。
• 特殊な条件を持つ物件では、事例との比較が難しい。
具体例:同じ地域で同じような間取り・築年数の物件が3,000万円で売却された場合、その価格を基に査定。
2. 原価法
概要:
建物の再建築にかかる費用を基に価格を算出する方法です。建築費用から建物の築年数に応じた減価償却を考慮して計算します。
• メリット:
• 建物の価値を具体的に評価できる。
• 建物が新しい場合、再建築費用に近い価格を把握できる。
• デメリット:
• 土地の市場価値や需要を反映しにくい。
• 築年数が古い物件では価格が低くなりすぎる傾向がある。
具体例:新築時の建築費用が2,000万円で、築10年経過している場合、経年劣化を考慮して建物の価値を1,500万円と算定。
3. 収益還元法
概要:
物件が生み出す将来の収益(賃料など)を基に、収益性を重視して価格を算出する方法です。主に投資用不動産の査定で用いられます。
• メリット:
• 賃貸物件や商業物件の評価に適している。
• 将来的な収益性を重視するため、投資家の関心が高い。
• デメリット:
• キャッシュフロー計算、空室率や将来の市場動向を予測するため、経験による査定結果に幅が出やすい。
• 自宅として使用する物件の査定には適さない。
具体例:年間の賃料収入が300万円、利回りを5%と設定 → 300万円 ÷ 5% = 6,000万円が査定額。
上記の評価方法から一般的な居住用不動産では主に取引事例比較法が使用され、収益物件(投資用不動産)では収益還元法が採用されることが一般的です。
では同じ様な評価方法を採用しているにも関わらず何故査定価格に大きな差が出るのか?
それは高額査定で売却依頼を取り付ける事を目的として査定を行なっている現状があるからです。
不動産会社が、売却依頼を受けるために他社よりも高い査定価格を提示するのは以下のような理由があります。
依頼を受けるための競争
• 不動産会社間では、売却の媒介契約(売却活動を依頼する契約)を取り付けることが重要な目標です。そのため、他社よりも高い査定価格を提示し、売主に「この会社なら高く売れそう」と思わせることを狙います。
媒介契約(売却活動を依頼する契約)の取り付けが最優先
• 実際の売却価格よりも高額な査定を提示し、まずは媒介契約を結ぶことを目指します。その後、売却が難しい場合は、時間をかけて価格を引き下げる提案をしていきます。
売れ残っても不動産会社にはメリットがある
• 広告掲載は多くの場合、不動産ポータルサイトの「掲載枠」を利用するため、初期コストがほとんど発生しません。
• 物件の売却活動中の問い合わせをきっかけに、別の物件の契約になる場合もあり、売却物件が増えること自体が営業的な価値を生む場合があります。
• 実際の売却活動は、成約見込みの高い物件に注力することが一般的です。成約が難しい高額設定の物件については、優先順位を下げて対応するため、大きな負担にはなりません。
売却を目的とした査定との違い
• 市場価格に基づく査定:
• 本来、不動産査定は「実際に売却可能な価格」を見極めるためのもので、市場の取引状況や需要・供給を反映した現実的な価格が提示されるべきです。
• 依頼目的の高額査定:
• 売却の依頼を受けるための査定は、売却可能性よりも、売主の期待を満たすことを重視し、実際の市場価格から乖離するケースが見られます。査定価格に納得できる根拠が示されているかが重要です。
売主への影響
このような高額査定には、売主にとって以下のようなリスクがあります。
売却期間の長期化
・高すぎる価格で売り出した場合、買い手がつかず、売却までに長い時間がかかる可能性があります。
・長期間売れ残った物件は、買い手から「何か問題があるのではないか」という印象を持たれやすくなります。
価格の引き下げ交渉
・売却が進まない場合、徐々に価格を引き下げることになり、最終的には適正価格よりも低い金額で売却するリスクもあります。
・徐々に値下げしていく、このプロセスが売主にとって精神的なストレスとなる場合があります。さらに価格を下げるタイミングを誤ると、さらなる長期化を招く可能性もあります。
買い替えや資金計画の遅延
・不動産の売却益を次の不動産購入や生活費に充てる計画がある場合、高額査定の影響で資金計画が崩れることがあります。
・生活資金や借入金返済が遅れるリスクがある。
他の不動産会社への依頼時の悪影響
・他社が「売れ残り物件」として扱うため、適切な売却活動が行われない可能性がある。
解決策と対策
売主がこのような状況に陥らないためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
• 査定価格の根拠を確認する:
• 提示された査定価格がどのような基準で算出されたか、具体的な根拠を確認します。
• 価格戦略を明確にする
• 早期売却を目指すのか、高額売却を目指すのか、目的に応じて価格設定を行いましょう。
• 媒介契約の種類に注意する:
• 一社に専任媒介契約を結ぶ場合は、その会社がどのように売却活動を行うか具体的に確認することが大切です。
ーーまとめーー
高額査定は一見魅力的に見えますが、売主にとっては「売却期間の長期化」「市場価値の低下」「価格引き下げのストレス」など、多くのリスクが伴います。これを防ぐためには、冷静に査定を検討し、適正な価格での売却を目指すことが重要です。不動産会社を選ぶ際は、価格だけでなく、その根拠や担当者の信頼性を重視しましょう。
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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太