生前贈与が相続に影響?特別受益の基本と注意点。その2
2024年11月15日 16:10
特別受益と遺留分との関係
特別受益と遺留分の基本的な関係
• 特別受益は、遺産分割の公平性を保つために、相続財産に「持ち戻し」して計算します。
• 一方、遺留分は、特定の相続人に最低限保証される財産の割合です。
• 特別受益を受けた相続人がいる場合、その金額も含めて遺留分を計算します。
【具体例】
• 被相続人(父)が長男に特別受益(住宅購入資金)として生前に3,000万円を贈与していました。
• 被相続人(父)は特別受益の元戻し免除の意思表示をしていた。
• 次男には生前贈与がありません。
• 父が亡くなった時点での現存する遺産は3,000万円。
• 相続人は母、長男、次男の3人。
• 法定相続分:母1/2、長男1/4、次男1/4。
• 遺留分:法定相続分の1/2(母1/4、長男1/8、次男1/8)。
ステップ1: みなし相続財産の計算(遺留分算定の為)
※特別受益を受けた相続人がいる場合、その金額も含めて遺留分を計算
みなし相続財産は、特別受益を含めて計算します。
• 残っている資産:3,000万円
• 特別受益(長男):3,000万円
• みなし相続財産:3,000万円 + 3,000万円 = 6,000万円
ステップ2: 遺留分の計算
遺留分は、みなし相続財産に基づいて計算します。
• 母の遺留分:6,000万円 × 1/4 = 1,500万円
• 長男の遺留分:6,000万円 × 1/8 = 750万円
• 次男の遺留分:6,000万円 × 1/8 = 750万円
ステップ3: 実際の分配額を計算
残っている資産3,000万円(元戻し免除の意思表示があった為)を法定相続分に基づき分配した場合
• 母:3,000万円 × 1/2 = 1,500万円
• 長男:3,000万円 × 1/4 = 750万円
• 次男:3,000万円 × 1/4 = 750万円
ステップ4: 遺留分侵害額請求の確認
長男は特別受益としてすでに3,000万円を受け取っているため、次男や母の遺留分が侵害されていないかを確認します。
• 次男の遺留分:750万円 → 次男の実際の取り分は750万円 → 遺留分を満たしているため、侵害なし。
• 母の遺留分:1,500万円 → 母の実際の取り分は1,500万円 → 遺留分を満たしているため、侵害なし。
ポイント:特別受益が大きい場合でも、遺留分を満たしていれば他の相続人から遺留分侵害額請求を受けることはありません。
ーーまとめーー
特別受益は、生前に特定の相続人が受け取った利益を考慮し、相続の公平性を保つために重要な仕組みです。しかし、その対象や計算方法、持ち戻しの有無、遺留分との関係は複雑であり、相続人間で意見が分かれることも少なくありません。被相続人が意思を明確に示さないと、家族間でトラブルが発生するリスクもあります。
そのため、生前贈与や相続について計画する際は、遺言書を活用して特別受益や持ち戻しの免除を明確にし、相続人全員が納得できる形を目指すことが大切です。複雑な相続分配や特別受益に関する問題は、専門家に相談することで解決策が見つかる場合が多いため、早めの相談と準備を心がけましょう。
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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太