相続・資産承継コラム

親が亡くなった時、孫が代わりに相続できる?代襲相続の基本と注意点

2024年11月15日 11:51

代襲相続とは、相続人が本来財産を受け取るはずの親などの直系の血縁者が亡くなっている場合、その子ども(孫やひ孫など)が代わって相続する制度のことです。つまり、相続人が死亡などによって相続権を失った場合に、次の世代がその人の立場に「代わって」相続することを意味します。


代襲相続を具体例をもとにみていきましょう。


【長男が先に亡くなっているケース】


被相続人(財産を残す人):父親

相続人:母親、長男、次男

長男:父親より先に亡くなっている

長男の子ども(孫):AさんとBさん


このケースでは、被相続人である父親が亡くなった際に、通常であれば長男が相続人になりますが、長男が既に亡くなっているため、代わりに長男の子ども(父親の孫)であるAさんとBさんが代襲相続人として相続します。


   父親(被相続人)─ 母親

         │

    ┌────────┐

   長男(死亡)      次男

    │

┌─────┐

Aさん    Bさん


この家系図をもとに、代襲相続がどのように発生するかを説明します。


1. 相続の基本状況

• 被相続人である父親が亡くなり、財産を残しました。

• 通常、相続人は母親と子供たち(長男と次男)です。


2. 長男の代襲相続

• 長男は既に亡くなっているため、本来の相続人にはなりません。

• 代わりに、長男の子供であるAさんとBさんが、長男の立場を引き継いで代襲相続します。


3. 相続分の分配

• 父親の遺産は、母親、次男、そして代襲相続人であるAさんとBさんで分けることになります。

• 仮に父親の遺産が1,200万円であった場合、法定相続分は次のようになります。

• 母親:1/2 → 600万円

• 次男:1/4 → 300万円

• AさんとBさん:合わせて1/4(長男の相続分を二人で分ける)→ 150万円ずつ




【兄弟姉妹が相続人になるケース】


被相続人:叔父(子供なし、相続の対象となる財産を持っていた方)

兄弟姉妹:叔父の兄(既に死亡)、叔父の姉(存命)、叔父の弟(存命)

代襲相続人:叔父の兄の子供であるAさんとBさん(兄の死亡により代襲相続の対象となる)


このケースでは、叔父が亡くなったときに相続権を持つのは兄弟姉妹と、亡くなった兄の子供であるAさんとBさんです。


           祖父母(死亡)

              │

┌────────┬───────┬───────┐

被相続人(叔父) 兄(死亡)    姉(存命)    弟(存命)

          │

    ┌─────────┐

   Aさん(甥)     Bさん(姪)


この家系図をもとに、代襲相続がどのように発生するかを説明します。


1. 相続の基本状況

• 被相続人である叔父が亡くなり、相続人として兄弟姉妹(叔父の姉と弟)と、亡くなった兄の子供が対象になります。

• 叔父の兄が先に亡くなっていたため、兄の子供であるAさんとBさんが代襲相続人として相続権を取得します。


2. 代襲相続の適用

• AさんとBさんは叔父の兄に代わって代襲相続人となり、兄が相続するはずだった分の遺産を2人で分けます。


3. 相続分の分配

• 仮に叔父の遺産が1,200万円だったとします。叔父の兄弟姉妹が3人(代襲相続人を含む)いるため、法定相続分は3等分されます。

• AさんとBさんが、叔父の兄の代襲相続人として1/3(400万円)が法定相続分になります。このため、AさんとBさんはそれぞれ1/6が法定相続分になります。

• 存命の姉と弟もそれぞれ1/3(400万円ずつ)が法定相続分になります。

Aさん(甥): 1/6 → 200万円

Bさん(姪): 1/6 → 200万円

叔父の姉(存命): 1/3 → 400万円

叔父の弟(存命): 1/3 → 400万円


【代襲相続の注意点】


1:再代襲相続は直系親族のみに適用

• 直系の子孫であれば、代襲相続は多段階で行えます(再代襲相続)。たとえば、被相続人の子が亡くなっていて、その子もすでに亡くなっている場合、その孫(ひ孫)も相続する権利が生じます。


2:兄弟姉妹には再代襲相続は適用されない(甥・姪まで)

• 兄弟姉妹に対する代襲相続は1代限りです。そのため、上記のケースではAさん(甥)がすでに亡くなっている場合でも、Aさんの子供がさらに代襲相続することはありません。


3. 代襲相続が成立する条件

• 代襲相続が成立するには、相続人となるはずだった人が被相続人よりも先に亡くなっていることが条件です。相続欠格・廃除によって相続権が失われた場合(相続権を失った場合)も代襲相続が適用されますが、相続人が相続放棄をした場合は適用されません。


4. 養子縁組による影響

・養子縁組によって新たに成立した親族関係は、相続の際に「養子縁組前」と「養子縁組後」の出生時期によって影響を受けることがあるため、相続関係の明確化や適用できる相続の範囲をしっかりと確認することが重要です。特に複雑なケースでは、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。



ーーまとめーー

代襲相続は、相続人が亡くなっている場合でも、その子孫が相続を引き継ぐ重要な制度ですが、条件や適用範囲、兄弟姉妹の代襲相続や養子縁組による影響など多くの細かい要件があります。相続分の計算や手続きの進め方によって、相続税や家族間での分配が大きく変わるため、確実で公平な相続を実現するためには専門家のアドバイスが欠かせません。相続に詳しい専門家に相談することで、最適な対応ができ、将来的なトラブルを未然に防ぐことが可能になります。

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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太