相続税ゼロが本当に得?二つの家族が学んだ相続の教訓
2024年11月12日 17:27
「相続のとき、少しでも税金を抑えたい――そう思うのは当然のことです。しかし、その目先の節税が、将来の家族に大きな負担をもたらすこともあります。A家とB家は、同じような家族構成と遺産額を持つ2つの家庭。父親の相続が発生したとき、A家は法定相続分に従い、B家は配偶者の税額軽減を使って全財産を母が相続することに決めました。一次相続で相続税をゼロに抑えたB家は得をしたように見えましたが、1年後に訪れた二次相続で、思わぬ現実が待っていたのです…。この2つの家族がたどった相続の道から、長期的な視点がどれほど大切かを見ていきましょう。」
【相続税を下げたつもりが…】
A家とB家は、どちらも仲の良い近所同士の家族でした。A家もB家も、夫婦と子供2人の家庭で、暮らしぶりや家族構成もよく似ていました。そしてある日、偶然にも両家で同じタイミングで父親の相続が発生し、それぞれの家庭で遺産について話し合うことになりました。
A家の決断
A家の遺産額は1億6千万円。「どう分けるのがいいかしら?」と母が子供たちに相談すると、家族全員で納得するまで話し合い、最終的には法定相続分で遺産を分けることに決めました。母が全額を相続することも考えましたが、税額のことや今後のことを考え、「子供たちにもそれぞれの分を相続させるのが良いだろう」と話し合いで結論を出しました。
結果、A家では相続税として860万円を支払うことになりましたが、今後のことも見据えた分割に安心感を持ち、少しほっとした様子で相続を終えました。
B家の選択
一方、B家も同じく1億6千万円の遺産がありましたが、「配偶者の税額軽減を使えば、今回の相続税はゼロ円にできる」という話を聞いて、母が全ての財産を相続することに決めました。「これで、余分な税金を支払わずに済むわね」と母と子供たちは安心して、手続きを進めました。
B家では、法定相続分で分割するA家と違い、相続税を全く支払うことなく、母親が無事にすべての財産を受け継ぐことができました。
・配偶者の税額軽減の内容
配偶者が相続する場合、次のどちらか多い方の金額まで、相続税がかかりません。
1. 1億6,000万円までの財産
2. 法定相続分相当額
時が流れて…
それから1年が経ちました。B家の母が亡くなり、二次相続の話が持ち上がりました。今度は母が相続していた財産は全て残っていた為、母名義の財産がそのまま子供たちに相続されることになりましたが、B家の相続税は2140万円となり、予想以上に高額となっていました。母親が一人で全額を相続していたため、トータルの財産が二次相続で一気に課税対象となり、税率も高くなっていたのです。
「こんなに高い税金を払うことになるなんて…」とB家の子供たちは驚きを隠せませんでした。配偶者の税額軽減を使って一次相続をゼロに抑えたつもりが、二次相続で想定以上の相続税負担がのしかかる結果となり、家族にとって大きな負担となりました。
一方、A家では、父親の相続時に法定相続分で財産を分けていたため、母親が亡くなった際の二次相続では、子供たちが支払う相続税は470万円となり、B家よりもずっと少額でした。A家の子供たちは、当初から分割しておいたことで相続税負担が軽減され、全体としての税負担が抑えられたことに安堵しました。
一次相続・二次相続の合計:A家1,330万円 B家2,140万円
教訓
B家の経験から、相続の際には「その時の税額を抑える」だけでなく、「長い目で見た税負担」や「家族の将来の資産管理」を考えることが重要だと学ばされました。税負担を先延ばしするだけでなく、最適な配分を考えることで、家族にとって安心できる相続が実現できるのだと、A家とB家はそれぞれに感じていました。
ーーまとめーー
相続には、配偶者の税額軽減やさまざまな特例があるため、上手に活用することで相続税の負担を軽減することができます。しかし、制度の適用には複雑な条件があることも多く、短期的な節税が将来的な負担につながる場合もあります。相続を見据えた資産承継は、専門家のアドバイスを受けて慎重に計画することが大切です。相続対策を考える際には、専門家に相談し、最適な選択を進めていきましょう。
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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太