相続・資産承継コラム

資産はどう引き継げばいいのか?相続、遺贈、贈与の違いと基本

2024年11月09日 15:28

大切な財産をどのように家族や大切な人に引き継ぐべきか――相続、遺贈、そして贈与の違いを理解することは、資産承継において非常に重要です。それぞれの方法には独自の仕組みがあり、受け取る人、タイミング、かかる税金が異なります。たとえば、相続は法定相続人が自動的に財産を引き継ぐ一方、遺贈は遺言によって第三者にも財産を遺すことができ、贈与は生前に財産を譲渡する方法です。具体例を交えながら、あなたにとって最適な資産承継の方法を見つけるための基本を解説していきます。


1. 相続


概要:相続は、被相続人が亡くなったときに法定相続人が財産を引き継ぐことです。遺言があればそれに基づき、遺言がなければ、遺産分割協議や法定相続分に応じて財産が分配されます。


税金:相続税


• 相続税は、相続財産全体に課税され、基礎控除(3,000万円 + 法定相続人1人あたり600万円)以内であれば非課税です。基礎控除額を超える場合には、相続税の課税対象となります。

具体例

田中さんが亡くなり、法定相続人として妻と2人の子供が残されました。田中さんの財産が6,000万円だった場合、基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円)を超えた1,200万が課税遺産総額になります。

そこから法定相続分に基づく課税対象額の分割を行います。

• 妻の法定相続分:1/2(50%) → 1,200万円 × 50% = 600万円

• 子供2人の法定相続分:1/4(25%ずつ) → 1,200万円 × 25% = 300万円(各子供1人あたり)

相続税の速算表に基づき、それぞれの相続税額を計算します。

1. 妻の相続税額

• 課税額:600万円

• 税率:10%

• 税額:600万円 × 10% = 60万円

2. 子供1人あたりの相続税額

• 課税額:300万円

• 税率:10%

• 税額:300万円 × 10% = 30万円(各子供1人あたり)


田中さんの相続にかかる相続税の合計は120万円となります。算出した相続税の総額を、実際の相続分で按分します。各相続人に割り当てられた相続税額に対して、さらに配偶者控除や未成年者控除、障害者控除など、個別の控除が適用されます。


注意点

法定相続人以外に財産を渡したい方がいる場合は、遺贈又は贈与による方法になります。




2. 遺贈


概要:遺贈は、遺言書に基づき、特定の人や団体に財産を譲ることです。相続人以外の人や団体にも財産を渡せるため、例えば友人や慈善団体への寄付などが可能です。遺贈によって財産を受け取る場合、相続人と遺贈を受けた人(受遺者)に関わらず、相続税の基礎控除額(3,000万円 + 法定相続人1人あたり600万円)は、遺産全体の評価額から控除されます。


税金:相続税(遺贈に対しても相続税が適用される)


• 遺贈で財産を取得した人が法定相続人でない場合(例:友人や親族以外の第三者など)、相続税額が通常の2割増しで課税されます。


例えば、以下の方は相続税額の2割加算の対象になります。

(1) 被相続人から相続または遺贈により財産を取得した人で、被相続人の配偶者、父母、子ではない人(例示:被相続人の兄弟姉妹や、おい、めいとして相続人となった人)

(2) 被相続人の養子として相続人となった人で、その被相続人の孫でもある人のうち、代襲相続人にはなっていない人


具体例

たとえば、田中さんが亡くなり、遺産総額が8,000万円で法定相続人が妻と子供1人の場合、基礎控除額は3,000万円 + 600万円×2人 = 4,200万円となります。仮に、遺言で田中さんが友人に1,000万円を遺贈し、残りを法定相続人に相続させるとした場合でも、基礎控除4,200万円が全体の遺産8,000万円に適用されます。このため、課税対象額は8,000万円 - 4,200万円 = 3,800万円となります。

法定相続分に基づく課税対象額の分割

法定相続人は妻と子供1人。

妻の法定相続分:1/2(50%) → 3,800万円 × 50% = 1,900万円

子供の法定相続分:1/2(50%) → 3,800万円 × 50% = 1,900万円

相続税の速算表に基づき、それぞれの相続税額を計算します。

1. 妻の相続税額

課税額:1,900万円

税率:15%

控除額:50万円

税額:1,900万円 × 15% - 50万円 = 235万円

2. 子供の相続税額

課税額:1,900万円

税率:15%

控除額:50万円

税額:1,900万円 × 15% - 50万円 = 235万円

合計相続税額:235万円 + 235万円 = 470万円


田中さんの友人は遺産8,000万円に対して1,000万円受け取っていますので全体の12.5%になります。

相続税額470万円の12.5%=587,500円に2割加算した70.5万円が田中さんの友人の相続税負担額になります。

注意点

法定相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限の取り分が法律で保障されています。遺留分を侵害する遺贈(例:遺言で財産のすべてを第三者に遺贈する)を行うと、遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があるため、相続人間のトラブルに発展することもあります。




3. 贈与


概要:贈与は、被相続人が生前に財産を他の人に譲渡することです。贈与は生前に自由に行うことができ、特定の人に現金や不動産を譲ることも可能です。


税金:贈与税


• 贈与税は、受贈者が1年間に受け取った贈与額に応じて課税されます。基礎控除として年間110万円の非課税枠があり、この範囲内であれば贈与税はかかりません。110万円を超えた場合は、累進税率に基づき贈与税が課税されます。また一般贈与と特例贈与に分けられます。


具体例

田中さんが生前に「二十歳の孫に500万円を贈与したい」と考えた場合、孫は110万円を超えた390万円部分に対して贈与税が課されます。特例贈与財産に該当しますので税率は15%・控除額は10万円なので贈与税額は48.5万円になります。


注意点

贈与税は累進課税であるため、高額の贈与には大きな税負担が発生する可能性があります。計画的に贈与することで、税負担を抑える方法が有効です。


ーーまとめーー

財産を引き継ぐ方法として、相続・遺贈・贈与はそれぞれ異なるメリットと手続きがあります。贈与は税負担を分散する計画的な資産移転に役立ち、相続や遺贈は遺言や法定相続分を活用することで希望に沿った資産承継が可能です。将来の相続や資産承継を考える際は、これらの特徴を理解し、相続や贈与に詳しい専門家の助けを借りながら、最適な方法を計画することをお勧めします。

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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太