配偶者の生活を守るために!知っておきたい配偶者居住権の仕組みと効果
2024年11月06日 15:15
配偶者居住権は、相続が発生した際に、亡くなった人(被相続人)の配偶者がそのまま自宅に住み続けられるようにするための権利です。配偶者が長年住み慣れた家で安定した生活を続けられるよう、2020年に導入された制度で、相続財産の分配時における配偶者の生活保障が主な目的です。
配偶者居住権の特徴
①. 住み続ける権利を確保
• 配偶者居住権を設定することで、配偶者は住み続ける権利が確保されます。そのため、被相続人が持ち家の所有者だった場合でも、配偶者は相続後もその家に居住し続けられるのです。
②. 配偶者の生活保障を目的とした分割
• 配偶者居住権を利用すると、配偶者が家に住み続けながらも、不動産の評価額を抑えた分の財産を別途相続することが可能です。
例えば、Aさんが亡くなり、配偶者であるBさんと子供Cさんが相続人となったケースを考えてみましょう。
• Aさんの主な財産は、自宅不動産(評価額3,000万円)と預貯金(1,000万円)の合計4,000万円です。
• 相続割合は、法律で定められたとおり、配偶者Bさんが2分の1、子供Cさんが2分の1です。
• 相続分の計算では、Bさんが2,000万円、Cさんが2,000万円相続する形になります。
このまま自宅をBさんが相続すると、相続財産が不動産だけに偏ってしまい、Bさんは生活費や医療費などのために必要な現金が不足する恐れがあります。そこで、「配偶者居住権」を利用することで、Bさんが家に住み続けながらも、現金を確保する方法を検討します。
配偶者居住権を設定した場合の分割例
1. 配偶者居住権(不動産の居住権)をBさんに設定
• 配偶者居住権を設定すると、自宅不動産の評価額が減額されます。例えば、配偶者居住権の評価額が1,500万円、不動産の残りの評価額(負担付所有権)が1,500万円とします。
2. 分割内容
• Bさん(配偶者)は、配偶者居住権(1,500万円分)と預貯金1,000万円を相続し、合計2,500万円分の財産を受け取ることになります。
• Cさん(子供)は、自宅不動産の負担付所有権(1,500万円分)と預貯金500万円を相続し、合計2,000万円分の財産を受け取ります。
この結果、Bさんは住み慣れた自宅にそのまま住み続ける権利が保障されると同時に、現金1,000万円を相続できるため、生活費や医療費の備えとして役立てることができます。さらに、不動産の評価額が減額されるため、Bさんの相続税負担も軽減されます。
一方、子供Cさんは不動産の負担付所有権を持ちますが、将来Bさんが亡くなった後に完全な所有権が戻る形となり、配偶者居住権が終わった時点で売却や利用の自由が得られます。このように、配偶者居住権を活用することで、配偶者の生活保障と不動産評価の調整が可能となり、相続財産をバランスよく分けることができます。
③. 第三者への譲渡ができない
•配偶者居住権は配偶者の居住を目的とする権利ですので,第三者に配偶者居住権を譲り渡すことはできません。もっとも,配偶者居住権を放棄することを条件に,これによって利益を受ける建物の所有者から金銭の支払を受けることは可能です。また,建物の所有者の承諾を得れば,第三者に居住建物の使用又は収益をさせることができますので,例えば,使用しなくなった建物を第三者に賃貸することで,賃料収入を得て,介護施設に入るための資金を確保することもできます。
④. 設定手続きが必要
• 配偶者居住権を適用するためには、相続の際に遺言書で指定するか、遺産分割協議で合意する必要があります。これによって、配偶者居住権が正式に認められることになります。権利を主張するための登記は,登記の先後で優劣が決まりますので,権利関係をめぐるトラブルを避けるためには,配偶者居住権を取得したらできるだけ早く登記手続をする必要があります。
⑤. 二次相続での配偶者居住権のメリット
• 配偶者居住権を終身で設定した場合、その権利は配偶者が亡くなった時点で消滅するため、相続の対象にはならず、また相続税の課税対象にもなりません。これは、配偶者居住権があくまで「住む権利」であり、不動産そのものの所有権とは異なるためです。
しかし、配偶者居住権を満了前に、対価の支払いなく消滅させる場合には注意が必要です。このケースでは、配偶者がその不動産を所有する相続人に「住む権利」を無償で返したとみなされ、結果としてその相続人に贈与が発生したとされます。このため、贈与税が課税される可能性があります。
ーーまとめーー
配偶者居住権は、相続における配偶者の生活の安定を強く支える制度です。特に、不動産資産が大きく現金が少ない場合に効果的で、配偶者の生活保障と相続財産のバランスを取りやすくします。ただし、設定手続きや権利の制限について十分理解し、専門家に相談しながら進めることが大切です。
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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 棚原 良太