行政書士 沖縄相続法務事務所相続の基本を学ぶ初回相談を見る

生前対策・相続不動産

親の家を子ども名義にしたい。生前贈与と相続、何を比べる?

名義を変えること自体を目的にせず、親の住まいと生活資金を守りながら、税・登記・家族への影響と後戻りのしやすさを比べるための案内です。

執筆・監修:棚原良太(行政書士・宅地建物取引士)最終確認日:2026年9月8日
この記事の目次

先に答え

生前贈与と相続は、税額だけで決めません。まず親本人が何を望み、家に住み続けるのか、生活資金を十分に残せるのかを確認します。その上で、贈与税・相続税、不動産取得税、登録免許税、将来の管理や売却、他の家族への影響を同じ前提で比べます。

贈与で名義を移すと、所有権を元に戻すには新たな合意・登記・費用や税務確認が必要になることがあります。「相続対策になるらしい」「110万円という数字だけを見て非課税と判断する」といった理解だけで、不動産の移転を先に進めないことが大切です。

大切なのは、名義変更より先に「何を守りたいか」を決めること

親の家を子ども名義にしたいという相談でも、将来の管理を任せたい、相続時の負担を減らしたい、家を残したいなど、目的によって確認事項が変わります。

所有者が変わることは、親の住まいや子どもの負担、他の家族の受け止め方にも影響します。親が住み続けるなら、その根拠、維持費・修繕費の負担、売却や担保設定を誰が決めるのかまで確認します。

判断軸 1|本人の暮らし

親の住まいと資金を守れるか

居住継続、生活費、医療・介護、修繕の見込みを確認し、贈与後も成り立つ条件を整理します。

判断軸 2|承継の方法

いつ、どの方法で移すか

いま贈与する案と、相続まで親名義で保有する案を、税・登記・管理・家族への影響で比較します。

親が「子どもに任せたい」と話すことと、直ちに所有権を贈与することは同じではありません。管理方法や遺言など、目的に応じた別の手段も確認します。

比較する前に、5つの事実を確認する

  1. 親本人の希望と目的誰が提案したか、親は何を心配し、何を実現したいのかを本人の言葉で確認します。意思能力は記事やAIで確定しません。
  2. 住まいと生活資金親が住み続ける期間、介護・転居の可能性、預貯金、収入、借入れ、家の修繕費などを確認します。
  3. 名義・利用・担保登記事項証明書などで名義・持分・担保権を確認し、同居人、賃貸借、敷地や建物の利用関係も整理します。
  4. 家族と他の財産他の家族の意向、将来の相続人、他の財産・債務、遺言の有無を確認します。未確認の意向を全員の合意とは扱いません。
  5. 税・登記・価格資料固定資産税評価証明書、路線価等、取得時期や取得費が分かる資料を集めます。税の評価額、登記の課税標準、売買の時価は同じ金額とは限りません。

生前贈与と相続を、同じ6項目で比べる

小さい画面では、表を横に動かして確認できます。

比較項目生前贈与相続確認したいこと
移転の時期合意と登記により、生前に所有者を変える。親の死亡後、遺言や遺産分割等を踏まえて承継する。なぜ今移す必要があるか。
親の暮らし贈与後に親が住み続ける条件と費用負担を明確にする。生前は親が所有者のまま管理・処分を判断できる。居住、介護、修繕、生活資金。
贈与税の課税方法、不動産取得税等を確認する。相続税の対象関係と申告要否を遺産全体で確認する。税理士に同じ前提で確認する。
登記費用所有権移転登記の登録免許税は原則2%。相続による所有権移転登記は原則0.4%。評価額、持分、免税・軽減、司法書士費用。
家族への影響特定の子への移転が、将来の相続や家族の納得にどう関わるか確認する。遺言や遺産分割を含め、全財産との配分を検討する。本人ごとの意向と未確認事項。
戻しやすさ戻すには、新たな合意・登記・費用・税務確認が必要になり得る。生前は方針を見直せるが、遺言等の方式と効果は個別確認が必要。将来の売却、担保、転居時の判断者。

税率は原則的な登録免許税率です。課税標準、端数処理、期限付きの免税・軽減、登記原因などで変わるため、実行前に司法書士・法務局等へ確認します。

「110万円」と税の制度を、混同しない

暦年課税の基礎控除

その年の1月1日から12月31日までに一人が受けた贈与の合計額から基礎控除110万円を差し引きます。贈与者ごとではなく、受贈者の年間合計で考えます。

相続時精算課税

要件を満たして選択する別の課税方式です。2024年以後は年110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除がありますが、特別控除は適用要件や期限内申告等の確認が必要です。選択した贈与者について暦年課税へ戻せず、相続時の計算との関係も確認します。

沖縄県の不動産取得税

相続による取得は非課税ですが、贈与による取得は原則として課税対象です。相続時精算課税を選んでも、不動産取得税では贈与として確認します。

評価額と時価

相続税・贈与税の土地は路線価方式・倍率方式、家屋は原則として固定資産税評価額を基に評価します。登録免許税等の課税標準や実際に売れる価格とは目的が異なります。

負担付贈与

借入れ等の負担を条件とする土地・家屋の贈与は、通常の取引価額に相当する金額から負担額を控除して課税価格を確認する取扱いがあります。譲渡所得等も含め、税理士へ個別に確認します。

110万円以下なら不動産の贈与全体に税や手続費用が生じない、という意味ではありません。持分だけを贈与する場合も、評価、登記、不動産取得税、将来の利用や共有状態を一体で確認します。

3つの整理BOX

整理 1|本人と暮らし

先に守ること

  • 親本人の希望
  • 住み続ける条件
  • 生活・介護資金
  • 修繕と維持費
  • 判断の見直し余地
整理 2|家と承継

確認する事実

  • 名義・持分・担保
  • 利用者と管理者
  • 家族の意向
  • 他の財産・債務
  • 将来の売却や活用
整理 3|専門判断

確認先を分ける

  • 贈与・相続税は税理士
  • 登記申請は司法書士
  • 対立・交渉は弁護士
  • 価格・活用は不動産調査
  • 本人意思に疑義があれば中止

仮想事例で、確認の順番を見てみる

説明のために簡略化した仮想事例です

母は家に住み続けたい。長男への生前贈与が話題になった

母は自宅での生活を続けたいと話しています。長男は将来の管理を考えて自分名義にする案を提案しました。長女にはまだ詳しい説明をしておらず、母の預貯金、今後の修繕費、家の税評価も未確認です。

  1. 目的を確認する:「管理を任せたい」のか「所有権を今移したい」のかを分け、母本人の希望を確認します。
  2. 暮らしを確認する:母の居住、生活・介護資金、修繕費と固定資産税を誰が負担するかを整理します。
  3. 家族への影響を確認する:長女の意向は未確認と記録し、長男の提案を家族全員の合意とは扱いません。
  4. 数字を比較する:税理士と司法書士へ同じ資料を示し、生前贈与と相続それぞれの税・登記費用・手続を確認します。
  5. 実行条件を決める:母の住まいと資金が守れ、家族への説明と専門確認が済むまで、名義変更を確定しません。

ここでの成果は「贈与が得」という結論ではなく、親の生活を守る条件、比較に必要な資料、誰へ何を確認するかが明確になったことです。

名義を動かす前の確認フロー

01親本人の目的と希望は確認できていますか?

本人の言葉を確認し、説明理解や意思に疑義がある場合は実行を止め、必要な確認先を検討します。

02親の居住と生活資金は守れますか?

住み続ける根拠、維持費、介護・転居時の資金と権限を確認します。

03家族・財産・不動産の全体像は見えていますか?

他の家族の意向、他の財産・債務、名義・担保・時価を整理します。

04税務と登記を同じ前提で確認しましたか?

税理士・司法書士等へ確認し、目的に合う場合だけ実行時期と方法を決めます。

相談後の整理シート見本

相談前に混ざっていた「名義を変えたい」という希望と、親の暮らし、税・登記、家族への影響を分けて整理する想定です。

親の家についての初回相談相談後の整理イメージ
説明用見本

相談内容

親は現在の家に住み続けたいと話している。将来の管理を考えて子ども名義にする案が出ているが、贈与する目的と他の家族の意向はまだ整理できていない。

これから整理すること

親の住まいと生活資金を守る条件、名義を移す目的、生前贈与と相続で生じる税・登記・家族への影響を分けて確認する。

優先して確認すること

親本人の希望、現在の名義・利用状況・借入れ、家の評価資料、今後の修繕費、子どもが負担できる費用、他の財産と家族の意向を確認する。

次の確認

前提を整理した上で、税額と申告は税理士、登記手続は司法書士へ確認する。贈与前に、親が住み続ける根拠と将来の売却等の権限も確認する。

説明用の仮想事例です。個別税額・登記可否・意思能力を確定する書面ではありません。

「名義を変えたい。でも、親の暮らしと家族への影響も気になる」という方へ

贈与か相続かを決めてから相談する必要はありません。まず、名義を変えたい目的と、親の暮らしを守るための条件を分けて整理します。

初回相談では、分かっている名義・利用状況・家族の希望を伺い、比較に必要な資料と、税理士・司法書士等へ確認する事項を整理します。

初回相談だけで個別税額、登記の可否、意思能力、生前贈与と相続の有利不利を確定するものではありません。

名義変更の目的と比較条件を相談する →

次に読む・確認する

公的情報と確認範囲

本記事は一般的な比較項目と確認の順番を示すものです。個別の法的・税務判断、不動産価格、意思能力、生前贈与と相続の有利不利を確定するものではありません。

登記申請の代理は司法書士または弁護士、税務代理・税務書類の作成・個別税務相談は税理士等、対立案件の法律相談・交渉代理・訴訟は弁護士の専門領域です。必要に応じて各専門家へ確認します。

行政書士 沖縄相続法務事務所相続不動産の相談窓口・合同会社エボルバ沖縄