認知症の進行で財産管理はどうなる?家族を守るための備えとは
2024年10月29日 13:24
認知症が進行して判断能力が低下した場合、法律上できなくなることが多くあります。
厚生労働省の発表によると、2025年には65歳以上の4人に1人、つまり全体の25%が認知症または予備軍になると言われています。
更に85歳以上に限っては、約55%、2人に1人以上が認知症になると言われています。ですのでかなりの確率で認知症を患う可能性があるわけです。
そして、認知症が症状が進んでいくと、自分の意思を示すことができなくなってきます。
このご自身の意思表示ができなくなってしまった状態を「制限行為能力者」と言います。
こう判断されてしまいますと、ありとあらゆることが制限されてしまいます。
以下、認知症が進行した後にできなくなる主なことです。
1. 遺言書の作成
• 遺言書の有効性:遺言書は本人の意思に基づくものであり、法的には「判断能力が十分な状態」で作成されなければ無効とみなされます。認知症が進行した後では「意思能力」がないと判断される可能性が高く、遺言書を作成することはできなくなります。
• 事前準備の必要性:遺産分割のトラブルを防ぐためにも、認知症になる前に遺言書を準備しておくことが大切です。
2. 家族信託契約の締結
• 家族信託の仕組み:家族信託は、信頼できる家族に財産管理を託す制度ですが、信託契約は本人の意思に基づいて行う必要があります。認知症が進行した後では契約の意思確認が難しいため、新規で家族信託契約を結ぶことはできなくなります。
• 対策のポイント:財産管理や相続対策を家族信託で行う場合、認知症のリスクが高まる前に契約を締結しておくことが重要です。
3. 生前贈与の実施
• 贈与の要件:生前贈与も本人の意思に基づくものであり、意思能力が低下していると有効な贈与ができなくなります。たとえば、年110万円の非課税枠を利用して贈与する場合でも、認知症が進行すると自己の判断で贈与を行うことが難しくなります。
• 後見制度下での制限:成年後見制度を利用している場合、家庭裁判所の許可がなければ贈与は行えないため、生前贈与の柔軟な活用が難しくなります。
4. 生命保険の契約・受取人変更
• 契約や変更の制限:認知症の進行後は、生命保険の新規契約や受取人の変更も難しくなります。特に、保険契約には意思能力が求められるため、認知症と診断された後の契約は無効とみなされる可能性があります。
• 相続税対策としての活用が難しい:生命保険は相続税の非課税枠を活用できる手段ですが、認知症進行後に契約変更ができなくなると、相続対策としての活用が制限されます。
5. 不動産の売買や財産の処分
• 契約行為の無効リスク:不動産の売却や財産の処分も、認知症の進行後は原則として行えません。特に高額な財産取引には意思能力が必須であり、認知症があると不動産の売買が行えません。
• 成年後見人による制限:成年後見人が選任されている場合、不動産の売買や大きな財産の処分は家庭裁判所の許可が必要になります。成年後見人の判断だけで柔軟に財産処分が行えないため、相続の準備が制限されることになります。
6. 相続時精算課税制度の活用
• 贈与と判断能力の問題:相続時精算課税制度も、認知症が進行すると利用が難しくなります。相続時精算課税制度を利用するためには、本人の意思で贈与を行う必要があるため、認知症で意思確認ができない場合には利用が制限されます。
7. 遺留分対策(特定の相続人に財産を多く渡すなど)
• 遺留分を巡る対策が困難に:認知症が進行すると、特定の相続人に多くの財産を残すための準備が難しくなります。たとえば、遺言書や家族信託で財産の分配方法を指定することができなくなり、法定相続分に基づいた分割が基本となってしまいます。
8. 定期預金の解約
・介護費用や生活資金の問題:認知症が進行した後の定期預金の解約には、本人の意思確認が必要になるため、解約手続きが難しくなることが一般的です。認知症の方が判断能力を失った場合、金融機関は、本人の意思に基づく契約ができないと判断し、解約に応じないケースが多くあります。
ーまとめー
認知症が進行すると、本人の判断能力が低下するため、多くの財産管理や相続対策が難しくなります。特に相続税の資金準備や遺言書の作成、家族信託、生前贈与などの重要な対策は、認知症になる前に準備しておく必要があります。認知症のリスクに備えて、早めに家族と話し合い、専門家のサポートを受けながら対策を進めることが重要です。
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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 代表社員 棚原 良太