相続・資産承継コラム

相続と保険の関係性

2024年10月25日 13:27

相続と保険と聞いて何か関係があるの?と思われる方も多くいらっしゃると思います。

実は保険には相続税対策や遺産分割の円滑化、家族の生活保障など、さまざまな面で重要な役割を果たす効果があります。


1. 相続税対策


生命保険は、相続税対策として非常に有効です。被相続人が生命保険に加入し、死亡保険金を相続人に残すことで、一定の非課税枠を活用できます。相続税法では、相続人が受け取る生命保険金について、法定相続人1人当たり500万円までが非課税となっています。これにより、相続税の負担を軽減することができます。


「ある家族の相続と保険を活用した非課税対策の物語」


主人公である山田家は、自営業を営む山田太郎さん(65歳)と、その家族である妻の花子さん(60歳)、長男の一郎さん(35歳)、長女の美咲さん(30歳)の4人家族です。太郎さんは、長年の努力で事業を大きくし、自宅と事業用の土地を所有していました。財産の大部分が不動産であり、現金はそれほど多くはありませんでした。


太郎さんの心配


最近、太郎さんは年齢を重ねたこともあり、相続について真剣に考え始めました。事業や不動産を次世代に引き継ぐためには、相続税が大きな負担になる可能性があると感じていました。特に、相続税を支払うための現金が不足し、不動産を手放す必要が生じるのではないかと心配していました。


相談内容


そこで、太郎さんは信頼している専門家に相談しました。専門家の提案は、相続税を軽減し、スムーズな相続を実現するための生命保険の活用です。


生命保険の「法定相続人1人当たり500万円までの非課税枠」を活用する方法でした。太郎さんの家族構成(法定相続人は妻と2人の子供の合計3人)では、合計で1,500万円までの保険金が非課税となる可能性がありました。これにより、現金資産の不足を補い、相続税の納税資金として活用できるという話でした。


太郎さんの決断


太郎さんはその説明を受け、すぐに行動を開始しました。まず、相続人である妻と子どもたちが将来安心して生活できるように、総額1,500万円分の生命保険に加入しました。この保険の受取人は妻と子どもたちに設定し、保険金が非課税となる範囲内で受け取れるようにしました。


さらに、太郎さんは自分が亡くなった際に、家族が相続税を支払うための現金を確保できるようにするために、追加で保険金を受け取る契約も結びました。これにより、家族が負担なく相続税を納税できる資金が確保されました。


いざ相続発生


数年後、太郎さんは高齢で亡くなりましたが、彼の計画的な相続対策のおかげで、家族はスムーズに相続手続きを進めることができました。特に生命保険の非課税枠を活用したことで、1,500万円までの保険金が非課税となり、その資金は相続税の支払いに充てられました。


不動産は長男の一郎さんが引き継ぎ、事業の継続が可能になり、長女の美咲さんと花子さんにも適切な財産が分配されました。また、生命保険金の一部は妻の花子さんの生活資金としても役立ち、家族全員が安心して今後の生活を送れる環境が整いました。


結果として


山田家は、生命保険をうまく活用することで、相続税の負担を大幅に軽減できただけでなく、不動産や事業を無理に売却することなく、次世代にしっかりと引き継ぐことができました。太郎さんが事前に計画的に行った相続対策が、家族にとって大きな財産となり、家族の絆も深まる結果となったのです。


この物語の教訓


生命保険を使った相続対策は、特に不動産や事業を所有している家庭にとって非常に有効です。生命保険の非課税枠を活用することで、相続税を軽減し、納税資金を確保し、家族が困ることなく財産を引き継ぐことができるというメリットがあります。事前の準備が将来の安心につながる、そんな保険の活用例です。



2. 生命保険で遺留分(相続人に最低限認められる相続分)の補填を行う


生命保険は、受取人を自由に設定できるため、特定の相続人に対して多くの財産を残したい場合や、遺留分を巡る争いを防ぐために活用できます。例えば、遺産の大部分を特定の相続人に相続させたい場合、他の相続人に対しては生命保険金を支払うことで、遺留分の補填を行い、公平感を保つことができます。


太郎さんには2人の子供(長男Aと次男B)がいますが、太郎さんは長男Aに事業を引き継いでもらいたいと考えています。しかし、次男Bも遺留分の権利を持っているため、財産の全てを長男に譲ると次男Bから遺留分の請求が発生する可能性があります。ここで、太郎さんは生命保険を活用します。


太郎さんは次男Bを受取人とする生命保険に加入し、保険金を次男の遺留分に相当する額に設定します。これにより、事業は長男Aに相続させ、次男Bには生命保険金で遺留分を補償することで、家族間の争いを防ぎながら、希望通りの遺産分割が実現できます。


上記のケースでは場合によっては長男のAさんに保険金を受けとって貰い、その保険金を遺留分減殺請求に当てる事も想定されます。



まとめ


保険を活用した対策は、相続人同士の争いを防ぎ、相続人に公平感を与えながら、被相続人の意思を最大限に反映することができる効果的な手段です。遺留分の問題は、特に不動産や事業など分割が難しい財産を相続する場合に発生しやすいですが、生命保険を活用することで、現金を柔軟に分配し、家族間の争いを未然に防ぐことが可能です。


事前に生命保険の活用を計画し、適切な受取人や保険金額を設定することで、遺留分に関わるトラブルを回避し、希望する遺産分割を実現できるでしょう。

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相続・不動産の相談窓口 合同会社エボルバ沖縄 代表社員 棚原 良太